地下構造物の設計に強み
1964年創業のメトロ設計は、現社長の小林一雄さんの祖父が、勤めていた帝都高速度交通営団(現在の東京メトロ)を定年退職後に仲間と一緒に起業しました。
創業初期は主に地下鉄の駅やトンネルの設計に従事。先代である小林さんの父が社長就任後は、共同溝(ガス管や下水管などのライフラインをまとめて収める地下施設)の設計に関わるようになり、これがきっかけで上下水道などの地下インフラ全般の設計も手がけるようになります。地下構造物の設計がメトロ設計の強みです。
主な設計実績に東京メトロ西葛西駅、東葉高速鉄道東葉勝田台駅、秋葉原駅エスカレーターなどがあります。
小林さんが入社した1998年は公共工事が減少しつつある時期だったため、公共工事への依存から脱却するべく、新規事業を次々と展開します。社会インフラの維持管理に伴う各種データベースの開発をはじめ、2000年に取得した本社ビルを使った不動産事業を手がけています。一時は仕事の9割程度が公共事業でしたが、現在は民間事業のウェートが上がり半分程度まで下がっています。
【メトロ設計 業務実績】
■鉄道関連施設の設計




実務経験の有無は問わず
同社が現在募集している設計技術者には入社後、構造計算に従事してもらう予定です。構造計算とは、建築構造物や土木構造物にかかるあらゆる荷重から、これらがどのように変形したり、どのような応力が発生したりするかを計算すること。構造物の安全性を確認する上で欠かせないものです。
構造計算の実務経験があったり大学で構造計算の基礎を学んでいたりすることが望ましいですが、こうした経験がなくても問題ありません。入社後に実務を教えるので、大学で力学や計算系を専攻していれば問題はないといいます。「最新技術を学んだり、新しいことにチャレンジしたりする意欲にあふれている人は向いています」(小林さん)
WLBにも本腰
構造計算の領域では、新しい構造物を作る一方で古い構造物を再生し維持することも必要になるため、設計技術者の必要性が増しているそうです。何より、体制を強化することで現場に過度な負荷をかけないWLBを大事にした職場にしたいという思いがあったといいます。
そもそも、残業が多いと言われている建設コンサルタントの業界。小林さんは「さまざまなスキルを持っている社員であればあるほど、その人に仕事が集中し、残業が多くなる傾向があります。負荷を分散させるために人材を募集・育成しなければなりません」と強調します。
WLBの改善は、経営理念を制定した2015年に取り組み始めました。まずは残業時間の削減からスタート。台東区の支援を受けて残業の多い仕事を洗い出し、社員の多能工化を推進するなどしてその仕事ができる人を増やしていきました。「私が入社した当時は月100時間ほどあった残業も、現在は平均で28時間程度まで削減されました。2030年までにはゼロにすることを目標にしています」(小林さん)

働き方を変えるために転職
メトロ設計で地下構造物の設計を担当している樋口直生さんは、2020年に転職してきました。以前は橋の施工会社に勤務。橋の構造計算や現場の施工管理を経験してきました。
転職を決意した理由は、働き方にありました。施工管理をしていた時は土日に休めるのは月に1日程度で、残業が月150時間を超えることもあり、「自分の時間がありませんでした」と振り返る樋口さん。小林さんも「中途採用した建設業界出身者は、前職で働き方に問題があった人が多いです」と話します。
建設業界の技術者の間で転職先として人気があるのが、労働時間や休日の面で条件がよい公務員の土木職です。
しかし、樋口さんは、それまでの実務経験が生かせて、ものづくりに関われる建設コンサルタント業界に絞り転職活動をします。公務員は民間企業が設計、計算したものをチェックするのが主な仕事であるため、建設コンサルタント業界の方が魅力的に映ったからです。
メトロ設計の求人に惹かれた理由として、同社が台東区のワーク・ライフ・バランス推進企業に認定されていたことがありました。「最初にホームページを見たときは、実態まではわかりませんでしたが、いろいろなことに取り組んで改善しようとしていることに魅力を感じて応募しました」と振り返ります。
面接時の説明で、WLBの改善に真剣に取り組んでいると実感できたことから、メトロ設計から内定がもらえたら入社する意思を固めていたといいます。

大幅に減った残業
メトロ設計の職場は、樋口さんが望んだスキルアップできる環境でした。限られた範囲を担当することが主だった前職と違い、最初から最後まで一貫して業務に関われるからです。
資格取得を希望する社員のサポート体制も整っています。外部講習費は会社負担のほか、論文試験が課される資格については社内で添削指導を実施。合格したら会社からお祝い金が支給され、資格手当が給与に加算されるようになっています。
樋口さんは入社後、コンクリート診断士、RCCM(シビルコンサルティングマネジャー)、技術士補の資格を取得しています。メトロ設計では数年前から、樋口さんをはじめとした20代、30代の若手社員が資格取得に熱心に励むようになり、その姿に影響され、先輩社員も資格取得に前向きになったといいます。「樋口のような社員を採用したいです」と小林さんが言うほど、樋口さんの資格取得への熱心さは社内に良い影響をもたらしているようです。
働き方も前職から大きく変わりました。前職では休日出勤が当たり前でしたが、2020年にメトロ設計に転職後は、休日出勤になることはまれで、なったとしても振り替え休日が取得しやすく、残業時間は月30時間ほどで前職と比べると大幅に減りました。
樋口さんの中で、働き方の改善に積極的というメトロ設計のイメージは、入社前より入社後の方が強くなっているそうです。
「柔軟な働き方ができる環境です。今までの経験を生かして設計をしたい人に、メトロ設計はぴったりだと思います」(樋口さん)
仕事の進め方も、前職とメトロ設計では異なるそうです。前職では何かを設計した時に、課長、次長、部長と順に承認を得ていかなければなりませんでしたが、メトロ設計では何かを設計したら大勢で集まってチェックし、一気につくり込んでいきます。完成までに要する手間が少なく、早く終わるところが前職との違いです。
「納期が集中する年度末になると、かつては会社に寝泊まりして対応していたものです」と振り返る小林さん。現在はWLBが改善され、会社に寝泊まりするようなこともなくなりました。
担当業務以外のプロジェクトで経営を学ぶ
また、メトロ設計には、経営計画を全社員で遂行するために、担当業務以外で何かしらのプロジェクトに必ず関わるというルールがあります。樋口さんも、創業60周年記念プロジェクトのチームに入り、謝恩会で実施するレクリエーションやパネル展示の計画に携わっています。こういったプロジェクト活動は他社の技術者では経験できないことであり、普段あまり関わりのない部署ともコミュニケーションが取れる貴重な機会になっているそうです。
プロジェクト活動の狙いは、会社経営を学んでもらうことにあります。土台にあるのは「会社の経営も社員の仕事」という考えです。
小林さんは「採用や社員教育など、プロジェクトに関わることで多岐にわたる経営の仕事が学べます。新入社員の時から会社経営について学んでいれば、誰が社長になってもいいわけです」と言い切ります。
樋口さんは「メトロ設計に向いているのは、一つのことに専念したい人より、いろいろなことに興味を持って楽しめる人だと思います」と言います。

転職者の多くが経営理念に共感
メトロ設計に転職してくる人は、経営理念に共感して入社を決める人が多いそうです。経営理念として掲げているのは、次の三つです。
・未来環境を創る仲間
・技術を未来につなげる仲間
・学び合い共に成長する仲間
最後に必ず「仲間」が出てくるように、仲間を大事にすることを大切にしています。
「仕事をする上で周囲を思いやる気持ちは大事だと思っています。周りを見て、必要とされることができる人は活躍できる会社です」(樋口さん)
宇宙の地下インフラづくりも夢見て
都市がある限り交通、電気通信、上下水道といった、人間が生活する上で必要な社会インフラはなくなりません。日本では少子高齢化により人口減少が進んでいくため、社会インフラを支える人材の確保と育成は切実な課題です。
しかし、地球規模で見れば人口は増えており、都市整備の需要はなくなりません。
こうした未来を見据え、メトロ設計は100年ビジョンをつくり、活躍のフィールドを日本以外にも広げようとしています。まず、ベトナム人1人とミャンマー人2人の計3人を設計技術者として採用。これらの国での事業展開を模索しているといいます。
小林さんが見据える事業展開は海外進出だけにとどまりません。もっと壮大なビジョンを描いています。
「そう遠くない将来、宇宙開発が始まっているでしょう。地球以外の星の地下インフラを手がけている会社にしたいと思っています。人間が住む星が変わった時、そこの地下インフラづくりに関われるようになりたいです」(小林さん)
この話を聞き樋口さんは「夢がありますね」と前向きに受け止めています。「荷重とかを考えながら月の地下の設計ができたら面白そうです」
取材・文/大沢裕司
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