大切な想いを「預かり守る」缶メーカー

同社は、1906年に石川さんの曽祖父の義兄・側島佐兵衛(そばじまさへい)さんが創業。養蚕業に使用する装置にブリキ板を使っていたことから、ブリキ板を使った器具製造の会社となったのが側島製罐のはじまりです。

現在は、お菓子や乾物などを入れるブリキ缶やスチール缶を製造・販売するほか、各種プレス加工やOEMも行っています。

一般消費者向けのBtoC製品では、北欧フィンランドの自然をイメージした「Sotto」シリーズも製造。自然を愛するフィンランド人の文化や幸福に関する価値観を温かみのあるデザインで表現しています。

フィンランドは生産性の高い福祉国家で、「ステイタスよりありのままの自分でいることを受け入れよう」という文化があります。缶の中に描かれているのは、フィンランドの古い民間伝承を起源とする「トントゥ(tonttu)」という妖精。トントゥは森や民家、フィンランド名物のサウナなどに住みつき愛されている守り神です。

創業117年の老舗缶メーカーとして、「大事なものは缶に入れる」という文化を未来に繋いでいくという思いが込められています。

視座の高さが求められる生産管理

生産管理の主な仕事は、生産のスケジュールを管理し、生産に必要な材料や資材を手配することです。製造側と営業とで連携を取りながら、営業の見積もりをチェックし、手配書を確認して材料や資材、印刷などを手配します。

「現状、当社には生産管理のシステムがないため、これから立ち上げる必要があります。まったくのゼロからではありませんが、仕組み作りからはじめていただくことになります。20代後半~40代前半くらいで、ITに長けている人。ノーコードツールを問題なく使いこなせるレベルの人だとありがたいです」と石川さん。

募集しているのは、前職で製造業の生産管理をひと通り経験した人。工場内の生産状況をすべて把握しながら営業側の数字も理解できる人。調整能力があり、視座の高く、全体の最適解がわかる人を求めているそうです。

「裁量を持ち、すべて生産管理者主導でおこなえるので、システム作りや業務改善を自分の手で行ってみたい人には最適な環境だと思います。当社には決裁における上下関係もなく、物品などの購入に上司の許可は必要ありません。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)内に沿っていれば、大抵のことは自由にできる職場です」。

「手書きで修正」を脱して効率化したい

前職で生産管理の経験はあるものの「仕事の環境がかなり異なる」と伊藤さん。「前職の会社ではすでにシステムがあって、入力するだけでした」。側島製罐では現状、注文をGoogleスプレッドシートで作成し、印刷して各自が持ち歩いています。急な変更には、各自が手書きで紙に修正を加えるため、共有漏れが起こることも。

「たとえば、お客様から商品のサイズや梱包量を変えたいといった希望が事前に入っても、社内で十分に情報共有をできていないことがあります。すると、生産当日になって『材料はあるのに梱包材(段ボールなど)が足りないため生産できない』といった問題が起こります」。

「今までは、経験のある個人の能力に頼るところが大きかったと感じます。これをマニュアル化して、誰でも簡単に使えるようにしたいです。すべての流れが可視化できて、全員でチェックできるシステムができあがれば、本当に助かります」。

現在、生産管理については、各生産工程の管理職と伊藤さんが話し合って進めています。全員が集まれるのが、本流の仕事が終わった後になるため、月の残業時間が30時間を超えてしまうこともあるといいます。生産管理で専任の人が来て効率化を進めてくれた場合、残業時間の大幅短縮につながる余地があると見ています。

若手の改革も「ありがとう」と歓迎

生産管理の仕事では、会社の基幹というべき仕組み作りを担うことになります。外部から来た人が社内を大きく変えることに対して社内の抵抗や反発はないのでしょうか?伊藤さんは「その点は心配無用です」と強調します。

「私も入社してまだ9カ月ですが、今のところ業務上おこなった改革で反発を感じたことはありません。たとえば工場内で使う缶の仕様書について、以前は雑然と机の上に置かれていたのですが、私が専用のラックを作って整理し、その日使う仕様書がすぐわかるようにしました。『仕様書をいちいち探す手間がなくなった、ありがとう』とお礼を言われました。感謝されたくてしたわけではないんですけどね」。

社内に「お礼を言う文化」があるという伊藤さん。「どんなことでもお礼を言われると、やりがいを感じます。小さな積み重ねでも、結果的に生産性の向上に貢献していると思います」。

チームワークの良さが自慢

「会社全体のチームワークの良さを感じます。製造側はできる限り営業の要望を汲もうと頑張ってくれますし、営業の方も納期が遅れた時などは、お客様に謝ってくれています」と伊藤さん。

「わからないことを古くからいる製造担当の人に聞きながら業務をおこなっていますが、みんなやさしく教えてくれるので、本当に助かっています」。

前職では「社内に監視カメラがあった」という伊藤さん。「監視カメラで見られていても、見えないところでサボる社員はいました。それが、自由なこの会社では、不思議に誰もサボる人がいません。手が空いたら忙しそうな人を手伝います。小さな会社ですが、みんなで助け合っています」。20代~80代と年の離れた社員の仲が良いことも自慢なのだそうです。

改革への投資は惜しまない

「側島製罐の生産管理の仕事は、モノづくりが好きな人にも向いている」と伊藤さん。自社製品をより身近に感じてもらうための取り組みが「缶察日誌」です。社員が自社の缶を使用した商品を購入し、レポートを書くと缶を購入した費用がキャッシュバックされます。お客様の売上にもなり、みんながハッピーになれるこの仕組みは、社員たちで考え出した制度だそうです。

石川さんは経営者として次のように述べます。 「通常の企業は、たくさんのNG項目の中に一部OKがあります。側島製罐は、一部のNGだけ守ればほとんどはOKという感じ」。改革のために必要であれば、ハードウェア・ソフトウェアへの投資は惜しまない風土を大事にしているそうです。

石川さんは「生産管理の仕事をお願いする方には、自由にやっていただければと考えています。給料などの条件面も当然考慮します」と強調します。

結果を出す責任は伴いますが、自分の力量を試したい人には大きなチャンスと言えそうです。「前を見て頑張る人に応えたい」という石川さん。頑張れる環境が、側島製罐にはそろっています。

取材・文/陽菜ひよ子

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